新駒奈日誌

Minecraftの建築に関する情報をよろずに書いていく。

【Minecraft】元ニコニコユーザによるMinecraft建築シーンの歴史(2/4)

  • 本項目は読み物です。筆者の恣意的な視点が混ざっていますのでご注意ください。
  • 本項目は日本国内、かつJava Editionについて扱います。海外とかの情勢はおろか、Pocket Edition(現在の統合版)における歴史とかはあまり追っていません。そこら辺の歴史を知っている人は是非自分で書いてもらいたいくらいです。

2. ニコニコ動画の時代 2012年~2015年 (Ver.1.2~Ver.1.7)

2-1. 建築コミュ誕生の時代 2012年~2013年前半 (Ver.1.3~Ver.1.5)

Minecraftの進化

2012年~2013年は立て続けに新しいバージョンがリリースされます。Ver.1.3にかけて、それまで1種類しか使えなかった木材のハーフや階段が4種類(オーク、松、白樺、ジャングル)になり、建築の幅が広がりました。

Ver.1.4になるとビーコンや金床、丸石の塀、額縁とかが出てきます。ゴシックなトゲトゲでおなじみの表現ができるのもこの時代からです。Ver.1.5になるとホッパー等レッドストーン関連のブロックが追加されました。

Ver.1.5からはテクスチャ開発がガラリと変わります。Ver.1.4までは今みたいに画像が分かれておらず、「terrain.png」という一枚絵から切り出したようなものでした。Ver.1.5からは画像ごとに個別になります。

建築の多様化

この頃からMinecraftを使った遊び方が多様化していきます。建築部に軍事部、回路や配布ワールド、MOD使ってもよしです。

建築一つとっても洋風、和風、現代建築と求められるスキルが異なるため、次第に分かれて行きました。

また、この時代あたりから動画だけでなく、少しずつTwitterニコニコ生放送を使う人が増えた時代です。特にニコニコ生放送は、ちょっとずつ作業配信をする人が増えました。収益なんて気にせず小規模な放送で、ケルト音楽を流しながら建築作業する放送を眺める牧歌的な時代です。Youtube Liveみたいにアーカイブは保存されることはほぼなく、放送の記録は残念ながらご紹介できません。

街づくり動画

前章で紹介したかでさんの動画を皮切りに、次々に街並みやお城、それを合わせて国を作る建築動画が誕生していきました。

現在も建築コミュの運営を続けているだんぼーるさん、MiniaTuriaの作者として有名なはすっこさんもこの時代からお城の動画を投稿されています。

デフォルト村の発展動画

デフォルトの村(当時はずいぶん寂しいものでした)をベースとして発展させる動画もあります。こうした動画は、初期の方はサバイバルが中心ですが、シリーズ後半になるとすごい建築の目白押しです。

本格的な和風建築

洋風だけでなく、和風建築についても触れていきましょう。再現オリジナル問わず強いこだわりを持って建築する方々が登場します。

とくにガワラさんの動画シリーズは2011年6月から1年半にわたり投稿され、和風建築に重要な影響を与えました。

また、本格的な城の動画を投稿する方々もいました。

建築コミュニティの誕生

2012年12月、Minecraft建築コミュニティが誕生します。先ほどまでの節で説明した一部の方々も関わっています。誕生したその日に最初のコンテスト、トイレコンテストが開催されました。優勝した甘みやさんのトイレは今でも発想面で傑作です。

トイレコンテストの次のコンテストとして、2013年初頭に橋コンテストが開催されました。おそらく筆者が知る限り最も気軽なコンテストの一つで、多くの参加がありました(筆者もすごく気軽に参加しました)。

MODを使った建築動画

一方で、この当時は3大工業MOD(IndustrialCraft、BuildCraft、RedPower)や家具MODなど、MODが盛んに更新された時代です。ブロックを動かせる「UgoCraft」も忘れてはいけません。前提MODもMinecraft Forgeに移行していった時代でした。それにより、MODを使った建築動画も発達します。

匠屋さんによる動画シリーズは特に人気を博しました。建築面もシリーズを重ねるにつれて大規模になります。

ニュータウン建設物語は現代建築特化で様々な家具MODを導入した動画シリーズになっています。

1時間建築のはじまり

その他のトピックとして、以下の動画を皮切りに1時間で建築する練習法が確立されました。このスタイルは当時動画が中心でしたが、次第に場所はTwitterに移っていきます。次の第3章で改めて紹介します。


2-2. メタテクスチャ登場の時代 2013年後半~2014年前半 (Ver.1.6~Ver.1.7)

時代背景

2013年後半になるとブロックが更に追加されます。Ver.1.6になると現在の色粘土(現在のテラコッタ)シリーズやカーペットの追加、Ver.1.7になるとバイオームの増加に伴うアカシアやダークオークの追加、そして花の大幅追加がありました。

建築コミュニティは活発化し、結構な人がまちづくりや建国に興味を持ち始めるようになりました。そんな中、メタテクスチャとよばれるテクスチャが発達し始めました。

メタテクスチャのはじまり

この時代、メタデータの性質を活かしたリソースパック(ここではメタテクスチャと呼ぶ)が登場します。このテクスチャはOptifineを入れるだけで、追加ブロックMODを入れることなくブロックの数を大幅に増やすことができます。

この当時、ブロックはID番号とメタ値によって管理されていました。例えばブロックID35の羊毛であれば35:0が白、35:1が橙といった具合です。このコロンの後ろの番号であるメタ値をすべてを使いきるブロックは稀です。そこで、例えば石ブロックの使われていない番号に新しいブロックを割り当ててしまう・・・という技術でした。これを可能にしたのがOptifine(MCPather)に含まれるCTM(Connected Texture MOD)と、MetaCycler等のメタ番号変更プラグインです。

・・・ただし、この技術はバグ技みたいなもので、使えるのは1.7まで。1.8になると制限がかかるようになります。オマケに、1.7で登場した2段花に至ってはメタ番号を変えると即クラッシュしてワールドが破損する(一応修復はできる)可能性のある危険な代物でした。

日本のテクスチャ有名なのは、「Tender World」です。紹介動画からすごい。

海外のものは中世テクスチャ「Conquest」が有名です。

少し後になりますが、「Cocricot」や「MiniaTuria」という現代でも続いているテクスチャもまずメタテクスチャとして誕生します。

クリエイティブモードの動画シリーズ

それまで当たり前とされていたサバイバルモードのシリーズ動画に加えて、クリエイティブモードで建築を行うシリーズ動画もこの頃から出始めてきました。というのも、従来はクリエイティブモードに対して「あくまで試作の場所」という印象が強かったためです。中にはほぼ毎日建築動画を上げようとする方もいたらしい。いくつか紹介します。

大規模な建築PV

前節で紹介したシリーズ動画が佳境になったりして規模の大きく質の高い建築を投稿する頃でした。そのほか、単発で建築PV動画を出すなどもありました。とくに上級者は「いかにマイクラっぽさを無くすか」を意識して、テクスチャを混ぜたり、自作する方も現れました。もはやある種の遺産レベルです。

Latteさんの動画は今でも衝撃を覚えた人ももしかしたらいるかもしれません。

再現の分野では、「進撃の巨人」で有名なシガンシナ区や、ロード・オブ・ザ・リングの世界観を再現したチームも現れました。

あちさんの動画は特に重要な影響を与えました。BGMからテクスチャ、建築まで全部一人で手掛けた極めて稀有な例です。ここまで徹底した方は、筆者は現在まで他に知りません。

造形分野の確立

建築とは若干枠が外れますが、2013年頃にはおよそ現在見るレベルの造形・飯テロのレベルが確立されています。筆者が個人的に今でも尊敬する作者はRC男さんやPEROさんが挙げられます。秋の味覚大戦のように、飯テロのイベントも当時あったらしいです。


2-3. 激動のMinecraft 2014年後半~2015年初頭 (Ver.1.7)

激動のMinecraft

ちょっと期間が短いですが、この時代に大きな変化があったので区分を分けました。

2014年にVer.1.8が登場します(海底神殿等が追加されました)が、後述の理由で建築コミュニティの世界であまり主流になることはありませんでした。1.8以降の様子については第3章で説明します。

さて、2014年はMinecraftにとって激動の時代でした。9月頃にほぼ同時に起きたBukkitの開発停止(補足1)とMinecraft開発元MojangのMicrosoft買収(補足2)です。特に前者は建築勢に影響を及ぼし、一時的にプラグインサーバの入手が難しくなったり混乱が引き起こされました。

そんなさなかの2014/11/8、YoutubeではHIKAKINさんがMinecraftのゲーム実況を開始しました。これまでニコニコの世界にいなかった人々にまでMinecraftが知られるところとなりました。しかし当時の建築勢の反応と来たら「キッズがくる」と戦々恐々。筆者個人的にはこれからも若くて優秀な建築勢はどんどん歓迎したいところです。同じくYoutuberのKUNさんが動画投稿を始めたのもこのあたりらしいです。

少し話は変わりますが、前章で紹介した東京ディズニーランド再現プロジェクトが完結します。当時は各所でニュースになったりしました。

[補足1] サーバMOD Bukkitの開発停止について
  • 第1章で説明したとおり、2012年にBukkitはMojang公認となるわけですが、開発者の一人が、BukkitがMojangの所有になることを不満に思い、「DMCA(デジタルミレニアム著作権法)テイクダウン」を起こします。結果的にBukkitの本体は正規のルートで入手不可能となりました。
  • SpigotはBukkitベースでしたが「BuildTools」を使って一応Bukkitの権利物を直接使わないように解決を図りました。Spigotサーバを立てたことがある人は「めんどくさいな~」と思った人もいるかも知れませんがそういう法的な事情です。
  • 一方で、そもそもBukkitの権利物を使わない「Sponge」がこのころ開発されましたが、対応プラグインが少なく主流となることはありませんでした。
[補足2] MojangのMicrosoft買収について
  • Minecraft開発元であるMojangはもともとインディーズゲーム(いわゆる小さなサークルみたいなところのゲーム)として開発されていました。しかし、もはやインディーズとしては規模が大きすぎていました。金額にすると25億ドルくらい。Microsoftによる買収は当時不安視され、「Minecraftを壊すのではないか」と恐れられました。今のところそのようなことはないらしい。

メタテクスチャ建築の活発化

前節で紹介したメタテクスチャを使った建築がこの頃特に活発になります。Tender Worldを使った代表的な建築動画を紹介します。

現在も続くシリーズ動画

一方、前節から引き続きまちづくり動画は盛んです。どういうわけか、この時期に現在も続く人気シリーズはこの頃複数誕生しています。

ゲーム実況その他多数の活動を行うハヤシさんもこの時代に投稿を開始するようになります。投稿ペースは遅いですが非常に人気があります。

PON☆Pさんによる動画も2023年現在まで続く人気シリーズです。こちらは動画数も多く、非常に息が長いシリーズです。

現代建築では、舞倉市に続いて佐山市がこの頃から動画を投稿開始されています。

交差点コンテスト

この激動の時代のさなか、2014年後半に交差点コンテストが開催されます。規模は150x150を1~2ヶ月程度で作成するなかなかハードなものでした。それでも結構な応募がありました。

冒頭でも述べたとおり、和風・洋風・現代等、動画を作られていない建築勢の方も含めて多様化した建築勢が一同に会する機会となりました。筆者も時々このワールドを参考にしています。

建築MODの充実

この時代になるともうMODの導入も現代とほぼ同じ手順です。建築補助MODもそれに合わせて充実しています。まず、主に現代建築で採用される「Real Train MOD」や「MCTE」、葉っぱをモサモサさせる「Better Foliage」、1.7ごろになるとLiteLoaderによるマクロMODも出はじめます。シェーダーの種類もSEUS一辺倒ではなく様々なシェーダーが本格的に出てきました。

交差点コンテストの後、続けてジオラマクラフトのシリーズが開始されます。こちらはConquestとReal Train MODを使ってジオラマを作るシリーズです。


ここまで、まだ2015年始まったばかり。濃密な時代ですね。説明の都合上、2015年年初頭の動画は一部第3章で紹介します。