【Minecraft】元ニコニコユーザによるMinecraft建築シーンの歴史(3/4)
- 本項目は読み物です。筆者の恣意的な視点が混ざっていますのでご注意ください。
- 本項目は日本国内、かつJava Editionについて扱います。海外とかの情勢はおろか、Pocket Edition(現在の統合版)における歴史とかはあまり追っていません。そこら辺の歴史を知っている人は是非自分で書いてもらいたいくらいです。
3. ストリーミングとSNSの時代 2015年~2018年 (Ver.1.2~Ver.1.7)
- 3. ストリーミングとSNSの時代 2015年~2018年 (Ver.1.2~Ver.1.7)
3-1. 安定期と媒体の多様化 2015年~2016年前半 (Ver.1.7~Ver.1.8)
バージョンアップの安定時期
2014年にVer.1.8がリリースされますが、ここからVer.1.9のリリースは2016年まで待つことになります。Ver.1.8になるとテクスチャの仕組みが変わり、モデルから作る「3Dリソースパック」が可能となります。ただし、いろいろ制限が大きいので使いやすい3Dリソースパックは少なく、もう少しVer.1.7メインの時代が続きました。
この頃は建築技術もコミュニティも成熟していきます。そんな背景を象徴するような楽曲マインクラフトクリエイティブを紹介します。
トレンドとしては、後に紹介するTwitterの情勢等や建築の長期化を防ぐ意味合いでも、「いかにかっこよく建築を見せられるか」がトレンドでした。内装がなかろうがハリボテだろうが容赦なくかっこよく見せます。反面内装等が衰退した時期でもあります。せっかくなのでこのトレンドを象徴するかのような動画を紹介します。
この頃になると発表の場はニコニコだけではなく、他の媒体も重要な建築発表の場となります。
建築イベントの多様化
2015年以降、前章で紹介した交差点コンテストの成功のあと、建築コミュ以外の方々も様々なイベントを主催するようになりました。一方、交差点コンテストを終えた建築コミュはしばらくおとなしい時期でした。
廃墟建築で当時有名だったGrantさんが開催した廃墟コンテストはその一つです。作成範囲等も交差点コンテストと似たようなものでした。
このころ特に活動が盛んだった企画グループがイベント放送室です。3日間+αで浮島をつくったり、たった5時間で城が生えたり今考えるとハードなイベントが多かったです。
Minecraftのイベントに興味を持っていたのはニコニコ公式も同じです。こちらは第1章で紹介したような昔からゲーム実況を上げていた方々が中心で、ニコニコらしいスタジアムを作る企画俺たちの新国立競技場もありました。人手が足りなすぎて筆者やイベント放送室のメンバーも内装のために駆り出されたりしていました。
現在も続くゲーム実況者を招待して行われる肝試しイベント、マイクラ肝試しも2014年から、この頃に年1回の企画としてスタートしています。毎回建築やギミックが豪華になっていき、配布マップを作られている方々もおよそ参考になるレベルではないでしょうか。
Twitter建築の発達
この頃から徐々に「Twitterで建築の完成品を見せ合う」文化が発達します。Twitterでは規模よりもスピーディーさとわかりやすさが求められるため、前章で紹介した1時間建築は特に向いていました。そのころ、マイクラ建築60分一本勝負(通称、ワンクラ)が開始されます。お題は直前に出され、60分で建築をしなければいけません。この企画は2015年から2018年くらいまで続き、120回以上のお題がありました。ニコニコが衰退した時代でも続き、ある意味建築コミュの衰退を防止していたといえます。中には、この企画で特に有名になったクラフターもいます。
Togetterまとめ: https://togetter.com/id/onehour_craft
和風建築ではTwitter企画である第1回の「そうだポスター作ろう」企画が開始されました。こちらは特に第2回以降、クラフターが多く参加する企画でした。
公式サイト: https://souda-poster.wixsite.com/poster-festival/
ムック本の登場
前節で「HIKAKINさんがマイクラを始めた」と言いましたが、この時代からMinecraftをテーマとしたムック本がHIKAKINさんのものも含めて盛んに登場するようになります。建築勢が関わった本としてははじめようMinecraftが皮切りとなりました。4人のクラフターがそれぞれのテーマでMinecraftの基礎から建築アイデア、レッドストーンからマルチサーバについての話まで説明した本です。筆者は今でも持っていますが、270ページ以上ある結構分厚い本です。
Amazonリンク: はじめようMinecraft Kindle版(Amazonリンク)
ここから、現在でも様々な会社があれやこれや、テーマを変えつつ様々なムック本が登場するようになります。まぁ質の悪い本もありましたが、体系的である程度信頼できる本媒体は子供を持つ親御さんから支持されたようです。
建築の成熟と制作の長期化
一方、大規模な建築はだいぶ成熟してきます。製作期間もだいぶ長期化してきました。まずは、この頃に有名になった建国動画の紹介から。
単なる建築だけでなく、造形と組み合わせたような建築の動画も出始めました。
天空の城ラピュタ世界観の再現はとくに有名です。こちらは6年がかりで映画の世界全体を再現しています。
配布ワールドの発達
Ver.1.8以降は建築ブロックとは別に、コマンド関係で重要な変化がありました。スコアボードコマンドの強化やアーマースタンドの登場です。これにより、配布マップはこの時代飛躍的に技術を向上させていきました。建築メンバーとコマンドメインのメンバーが合わさって、レベルの高い配布マップが誕生したりしました。
旅への誘いコンテスト
2016年前半になると、Minecraft建築コミュ唯一となる動画を投稿する形式のコンテストが開催されます。MODテクスチャなんでもありで、1分間の動画を投稿します。旅への誘いコンテストです。せっかく受賞したし筆者自身の拙作も紹介して良い・・・?
3-2. ニコニコ動画の衰退期 2016年後半~2017年前半 (Ver.1.9~Ver.1.12)
立て続けのリリースと1.7永住
2016年に入ると、Ver.1.9からVer.1.12まで駆け抜けるようにリリースしていきました。多くはサバイバル面での変更ですが、Ver.1.12は採油テラコッタやコンクリート、ベッドの多色化など色に関するアップデートが登場しました。この頃になるとだいぶバニラでも豊かな表現ができるようになってきました。
Ver.1.8が誕生した時点で理論上3Dリソースパックができますが、まだまだ普及しているとはいえません。そんな中、中世テクスチャ「Halcyon Days」や和風テクスチャ「橘テクスチャ」は早くからバージョンアップに対応しました。そのため、Ver.1.8以降の建築はバニラ以外まずそうしたものが中心となりました。ただし、建築MODとして誕生するのはもう少し後の話。
Ver.1.7向けのメタテクスチャもまだ登場します。現在も愛用者が多い「cocricot」がこのころVer.1.7用のテクスチャとして登場します。動画よりかはTwitter等で投稿するために建築として人気が出ました。また、開発中のMiniaTuriaから一部アドオンとして「MiniaTuria Timber Frames」もこの頃出てきます。
ニコニコ衰退のはじまりとリアルイベント
長らく支配的だったニコニコ動画も、人々がだんだん離れつつある時代でした。ニコニコは長らくPC中心の文化でしたが、スマートデバイスへの対応が後手に回っていました。さらに、ニコニコのような文化は長らく「金儲けは悪」の文化があったことも要因と言われています。そのため、ニコニコにいた人ですらYoutubeに移行し始めました。とはいえMinecraftはPCゲームとして発達した文化であり、建築コミュニティの中心はぎりぎりまだニコニコ動画でした。比較的切り替わりが遅い世界だったといえます。
建築動画の投稿ペースも遅くなりました。「びっくりするような建築動画を上げたい」と様々な人が意識するようになりました。製作期間は長期化し、進捗を投稿したりライブを流すような活動が減ったりしました。モチベも保てなくなる人が増え、一人で建国することはもはや効率が悪く、時代のニーズに合っていませんでした(それでもやる人はもちろんいましたが)。
そんな中、ニコニコ超会議イベント内で「超マイクラひろば」と呼ばれるリアルイベントが開催されました。中ではコンテストはこにわクラフトが開催されました。当時はクラフター個人が各々持ち寄った名刺を配る文化もありました。筆者もその一人なので、中には今でも筆者の名刺を持っている人がいるかもしれません。ただ、個人ベースのイベントは限界があり、この形式のスタイルは2年限りで長続きしませんでした。
ニコニコにおける状況
先に述べたとおりの状況のため、だいぶ建築の動画は減ります。それでもまだニコニコでは動画が投稿されています。再生されやすい動画は、特に第2章で紹介した長期シリーズの動画が主流となっていきます。先に紹介したラピュタの再現が完結するのもこの頃です。
この時代の建築シリーズといえばだんぼーるさん&はすっこさんのハイカラクラフトでしょう。明治大正時代の日本は今までありそうでなかった建築スタイルです。
また、3Dリソースパックの発達に従いそれを使った建築が誕生したりもしました。以下に例を示します。
Twitterの状況
Twitterではまたまだワンクラを始めとした企画がまだまだ続いています。また「盆栽クラフト」のようにハッシュタグの提案など簡単なお題のテーマから作品を投稿するような取り組みも各所でありました。 サーバで言えば、このころ5年目を迎えた建築サーバVermilion Server(朱サバ)が最初の建築お披露目会を開始したりしています。
Togetter: https://togetter.com/li/1089880
また、複数のサーバ共同で「さばちゃんぽん」が始まっのはこの頃だったはず。また、記録が残っていないのでいつ頃だったかは筆者がわかりませんが、はやなささんによる建築サーバもこの2017年ごろの時代だった記憶です。
Youtubeの状況
筆者とは住む世界が違っていたたため、あまりこちらの事情に詳しくありません。古くからYoutubeでは海外勢や高画質動画の投稿こそありましたが、国内では単発の建築作り方動画が中心でした。まともな動画も多い中、お金のためならパクる等モラルに反した動画もあり、そうした負の側面からニコニコの建築勢からは信頼されませんでした。そんな中、いくつか建築シーンで重要な方も居るため紹介します。
鶴太郎さんはこの時期からYoutubeで建築動画を作ったりして活動されていました。
一方でKUNさんのチームによる建国クラフトが開始された頃でもあります。動画こそ途中ダレてしまったとのことですが、2020年には完結したようです。若いときにこうしたシーンを見た方が現在建築勢として活動されている例もいます。
建築勉強会
コンテストは審査のコストもかかりますし運営がすごく大変です。そこで、建築コミュニティを盛り上げる別のアプローチとして、期間を決めて単純にマルチ建築を行う建築勉強会が開催されました。初回はConquestでゴーストタウンを作りました。今の違法建築イベントもこの延長線上にあります。
http://blog.livedoor.jp/mc_kenchiku_com/archives/1061226850.html
3-3. 統合版の誕生 2017年後半~2018年前半 (Ver.1.12)
統合版の誕生
この頃はバージョンアップこそない安定期でしたが、重大な出来事が発生します。2017年9月20日、MinecraftのPocket Edition、Win10版、XBOX版が統合されて「Bedrock Edition」が誕生しました。これにより、いままでのJava版のMinecraftは「Java Edition」となります。このころから、「Minecraftが教育に有効」と世間で言われ始めるようになりました。また、Minecraft公式が日本のマイクラシーンにも積極的に介入するようになります。ここから、マイクラ主体のYoutuberがだんだん力をつけていきます。
この頃になると流石にVer.1.7はブロック数の面できつくなってきました。このころ、Minecraftの統合モデル開発ツールblockbenchが誕生します。これにより、3Dリソースパックの作成はより気軽になり、メタテクスチャ主流だった開発者も本格的に新しいバージョンに興味を示すようになります。3D建築MODの誕生に道が開けだします。これについては第4章で説明します。
Minecraft公式とのかかわり
そんな中、2018年になるとMinecraft公式が本腰入れて日本に注目するようになります。そんな中、「睦月城」が、日本初のMinecraft公式マーケットプレイス配布作品となりました。要はちょっとした報酬が得られるようになったわけです。この後、インプレス社が仲介となってその後に続いてマーケットプレイスに作品を投稿する方が複数現れます。
上記の作者のひとりである龍波しゅういちさんは、マイクロソフトから公認されたプロマインクラフターとして就任し、教育活動を開始します。※この方は、どちらかと言えばニコニコのゲーム実況を経た方でした。ただちょっと経緯があり全肯定で歓迎されたわけではないため、古参の方にこの話をする場合は要注意。
一方、軍艦島を再現したかとりくさんがネットの記事で紹介されたり、Minecraft公式の招待を受けて実際の軍艦島に行く取材を受けたりしています。最初の節で紹介したワンクラにも投稿されていたので筆者もびっくりしました。
ニコニコの没落
このころ、ニコニコはもはや没落とも言うべき決定的な事件が起きました。2017年12月、ニコニコ公式の発表会で運営の不手際により大きな批判が寄せられ、取締役が交代する出来事が発生しました。また、レジェンドクラスの建築勢はこの頃になると家庭を持ったり、あるいは他の世界(関連職業についたり、リアルクラフトしたり・・・)に行ったりして事実上引退する方もいました。この時期は大きなイベントもなく、動画は継続シリーズを除くと、たぶん最も静かで少し寒い時代です。
この時代は盛んに衰退が叫ばれていました。筆者はニコニコ動画はもうダメかなって判断しましたが、マイクラ自体が衰退したとは思っていませんでした。まだバージョンアップは続きますし、前述のYoutubeの兆候があり、ニコニコ最盛期ほどまではいかなくとも、そのうちまた盛り上がりだすのではというちょっとした期待がありました。
Youtube移行期の動画
この時期は移行期です。ニコニコにも動画が投稿されますが、同じシリーズを投稿している方も、再生数がニコニコとYoutubeとで逆転しはじめました。 なお、この寒い時代でもPON☆Pさんやハヤシさんが相変わらず元気でした。
この時期に、パッカーさんが独創的なアニメーション動画を投稿します。
建築のYoutuberで現在最も有名な方は雨栗さんでしょう。最初の作り方動画を投稿されたのはこの時期です。
ここまで、2017年途中。もうちょっとだけ続くんじゃ。まだ3DリソパMODも触れてないし、VTuberとのかかわりにも触れてない。それは第4章になってから。